IGXBlogシステムづくりは、作る前と作った後がむずかしい

システムづくりは、作る前と作った後がむずかしい

「こういうことできますか?」

この仕事をしていると、よく聞かれます。答えはたいてい「はい、作れます」です。昔と違い情報も環境も整っているので、作ること自体はそこまで高いハードルではありません。

それでも仕組みづくりやアプリ開発がうまくいかない話は、よく耳にしますし、私自身も実体験としてあります。

作ったのに使われない。使っているけど、結局一部は手作業で行なっている。何かのきっかけで全く使わなくなっていた。

こうなる原因は、たいてい「作る」ところにあるのではなく、「作る前」と「作った後」にあります。

業務は、言葉になっていない部分でできている

ある作業を自動化することになった時、まず「現在どうやっているか」を教えてもらいます。

多くの場合、最初に出てくる説明はきれいです。「このデータを集めて、ここに貼り付けて、合計を出します」。

ところが、詳しく話を伺っていると、雲行きが怪しくなっていきます。

  • 「あ、でも月末だけは、この数字を先に引いておくんです」
  • 「この取引先だけは、返品の扱いがちょっと違って」
  • 「ここは毎回、何となく目で見て判断しています」

普段頭の中で自然にやっていることほど、言語化できていないものです。そして、システムを使い物にするかどうかを決めるのは、たいていこの「言語化できていない部分」です。ここを取りこぼしたまま作ると、表面上は問題なく動作するのに、現場では全く使えないものができあがります。

だからIGXでは、作る前に現場のやり方をしつこく聞きます。

「正しく動く」の「正しい」を決めるのがむずかしい

システムが「正しく動く」とは、どういうことでしょうか。計算が合っていること。もちろんそうです。でも、それだけでは足りないことがあります。

事業・店舗ごとの利益を出すアプリをつくったときの話です。

実はこの「利益計算を行う」作業は、もともと私自身がやっていた作業でした。当時関わっていたEC事業で、事業ごと・店舗ごとの利益をスプレッドシートで手計算していて、毎月約70時間かかっていました。手作業なのでミスも起きやすい。そして、できあがった数字を見る人には、それがどのデータから、どう計算されたものなのかが分かりませんでした。

自分の作業を自分で楽にするのだから、話は簡単そうに見えます。計算を自動にして、速くすればいい。

でも、毎月その数字を作っていた当事者として、速くするだけでは足りないことも分かっていました。数字の出どころが見えなければ、見る人は「これ、本当に合ってる?」と思っても確かめられません。それでは数字を信じきれず、判断にも使いにくいままです。

そこで、利益の数字ごとに、元のデータと計算方法をその場で確かめられるようにしました。計算は約1時間で終わるようになり、一見するとそこが一番インパクトが大きいようにも見えますが、それよりも大きな変化は、「根拠が見える」ようになったことでした。

このときは、私が業務の当事者でした。でも、ふだんご相談いただく業務では、私は当事者ではありません。外から「速くしたい」とだけ聞いて作れば、「計算が速いだけのアプリ」で終わっていたかもしれません。何が本当に困っているのかは、その業務を毎日やっている人にしか分かりません。だから、当事者と同じくらい分かるまで聞く。それが、このときの経験から私が大事にしていることです。

作った後も、業務は変わり続ける

業界ではよく言われることですが、システムは完成した瞬間がゴールではありません。

店舗が増える。取引先が変わる。ルールが変わる。使う人が入れ替わる。業務は生き物のように変わっていきます。作ったときにぴったりだった仕組みも、放っておけば少しずつずれていきます。そしてずれた仕組みは、そのうち誰にも使われなくなります。

だからIGXでは、作って渡したら終わり、にはしていません。動いている様子を見守って、ずれてきたら手を入れます。地味ですが、仕組みが「動き続ける」かどうかは、ここで決まります。

だから、小さく作る

ここまでの話をまとめると、システムづくりでいちばん怖いのは、ずれに気づくのが遅れることです。業務の理解がずれていた。必要なものがずれていた。作った後に、業務のほうが変わってずれた。

一度に全部を作ろうとすると、ずれに気づくのは完成した後になります。そうなると、直すのも大変です。

なので私は、効果の大きいところから小さく作って、早めに実際に触ってもらうようにしています。触ってみて初めて「あ、ここはこうじゃなくて」と出てくることは、本当に多いです。それが早く出てくるほど、最後にいいものになります。

おわりに

システムをつくる技術は、もちろん大事です。でも、それと同じくらい、あるいはそれ以上に大事なのは、業務とそこにいる人をちゃんと理解すること。そして、作った後まで付き合うことだと思っています。

ときには、話を聞いた結果「これは作らないほうがいいです」とお伝えすることもあります。今のやり方を少し変えるだけで済むなら、そのほうがずっと安上がりで、確実だからです。

「これ、システムにできるのかな」と思うことがあれば、まだぼんやりした段階でもかまいません。お気軽にご相談ください。まずは、いまのやり方を聞かせてもらうところから始めます。


自分の業務でも試してみたい、という方はお気軽にご相談ください。